江戸前の定義
現代、「江戸前」と名が付くのは
江戸前寿司ですね。
じゃぁ、この江戸前という意味はなんでしょう?
ここいらあたり(日本橋)の、寿司屋の職人さんなら
「すりゃー、江戸前、つまり江戸湾で取れた魚を使った
寿司だからでさー」
と、答えるでしょう。
じゃぁ、今の寿司屋のネタケースに
江戸湾、つまり東京湾で取れた魚は、どれだけあるんだって
聞きたいよね。
そこで、近所の寿司屋で聞くと
どうやら、一番多いのは、相模湾みたいですよ。
房総も多い。
生粋の江戸っ子と知られている穴子だって
羽田産は、いつもある物じゃないらしい。
そもそも、
江戸前の文字が現れたのは
江戸前寿司と呼ばれる握り寿司が登場する
文化文政時代(1804~1830)より、ずーっとまえ、...
享保年間(1716~36)の事。
この川柳を、みてください。
江戸前の 風は団扇で たたきだし
さて、この江戸前は、はて、なんでしょう?
そう、鰻です。
鰻の蒲焼きに、わざわざ江戸前の字をあてています。
鰻は、川魚ですから江戸湾じゃとれませんねー。
神田川や、深川に、どっさりいたそうですよ。
するってーと、江戸前の定義として「江戸湾」は
不適切です。
じゃぁ、この“前”は、何だろう?
この点について、杉浦日向子さんが、答えてくれました。
皆さん、「男前」って言葉をご存知でしょ。
「あっしには、関わりござんせん」と、そっぽを向くのは
私だけじゃないかも知れませんな。(笑)
男前の“前”と江戸前の“前”は、同じ意味だそうです。
そこで、「男前」を辞書で調べました。
男前とは、...
男の中の男だと、振り返って見られるような ふうさい
すいじゃー、これを、江戸前に置き換えると
江戸前とは、...
江戸の中でいろいろあるが、これぞ江戸だと
自慢出来るものもの
と、私は、解釈しました。
江戸は、鰻の蒲焼きの発祥地。
ふわふわで、舌にのせると、とろけてしまいそうな
柔らかい食感の鰻は、他所では、絶対口に出来なかった
ものでした。
鰻の蒲焼きは、一皿200文したそうです。
享保時代の1文を、今の15円だとして、3000円ですね。
もし、日本橋地区で、そう言ったふわふわの蒲焼きは
単品で、7000円はしますから、そう高くはないでしょ。
でも、文化年間(1804~18)に登場した
鰻丼となると、100~150文だったそうです。
「なーんだ、1500円から2000円ちょっとか」
と、お思いでしょうが、丼の大きさが
今の三分の一程度でしたから、割高感を感じます。
鰻は、安くても、調理に用いる、醤油やみりんが
今に比べると、ずいぶん値がはるものだったようですね。
江戸前の鰻は、背中から割きますが
これは、脂ののったお腹部分に火が良く通る様にとの
工夫です。
これとともに、...
素焼きにした鰻を一度蒸して、また焼くという
複雑な工程も、より、柔らかくする為のものなんです。
江戸前寿司は、東京以外でどこへ行っても
食べられますが、江戸前鰻だけは、東京の旧江戸地域でしか
食べられないんじゃないかと、実感しております。
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